「経営者になんかならない方がいいぞ。もう地獄だから(笑)」
そう笑うのは、株式会社ツナグバ代表・仲村社長。建設・介護・看護領域の人材紹介と施工管理の派遣を手がけ、20代のキャリア支援に向き合いながら、売上700億円・営業利益100億円を掲げる。
地獄だと言いながら、それでも続けている。なぜか。その答えは、35歳まで大きな成功がなかったという、決して順調ではないキャリアの中にある。
第1章 20代の不安と、ツナグバが見据える100億円
仲村社長のもとには、AIに代替されない仕事とは何か、AI時代にどう生き残るべきか、といった20代からの相談が寄せられる。
2010年卒。インターネット広告の予算が、まだ新聞やラジオより低かった時代にその業界へ飛び込んだ仲村社長自身も、変化の速さに驚いているという。
「大体10年後とか20年後は大体分かるけど、この3年後を予測するのがすごい難しくて」
ここで仲村社長は、20代の不安を切り分ける。
「根拠のない不安だし、根拠ある不安だよね」
何をやるか分からないという、経験のなさから来る不安。それは根拠のない不安だ。だが同時に、業界の中にいる人間ですら3年後を読めないという現実がある。若手が抱く不安には、はっきりとした根拠もある。だからこそ、気にしすぎだよ、とは言えない。
では、その不安に何ができるのか。ツナグバが掲げるのは「情報非対称性」をなくすことだ。
たとえば建設業界。かつては男女別のトイレすらなかった現場が、いまは当たり前になった。土日休みも取れるようになり、残業も減っている。そこまで含めた現場のリアルを伝えるために、10回以上の面談を重ねる。
ではなぜ、この市場なのか。仲村社長はここで、ふたつの言葉を使って説明する。
「マーケットイン思想とプロダクトアウト思想で言うと——」
マーケットインは、市場の側から考えることだ。生産年齢人口が10年ほどで1000万人規模で減る一方、建設、介護、物流は人がいなければ回らない。需要は確実に高まる。
プロダクトアウトは、自分たちが何を渡したいかだ。20代はキャリアのことも社会のことも、まだ分からない。だから正確な事実を伝え、信頼関係を積む。10回の面談は、その具体である。
市場の必然と、自分たちが渡したいもの。その両方が揃っているかが、いまの事業を見る基準になっている。
そのうえ、この仕事には手触りがある。
「相手の親から電話が来て、うちの娘をこんなところに入れてくださって、ありがとうございます、とか」
だが、目標の前に立つ壁は市場ではないという。
「壁になってくるところで言うと、組織の成長ですね。マーケットはあるんですよ」
